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場合に、その取引価格が独立企業間価格で行われたものとして課税所得を計算し、関係国間の協議により適正な課税の実現を図ろうとする制度であり、その根拠については2国間の租税条約、国内法により規定の整備がなされている。
イ 地方税への影響
この所要の手続きに沿って、法人税において外国の法人所得課税との間で調整が行われた場合には、「法人税額」を課税標準としている法人住民税及び法人の「所得」を課税標準としている法人事業税にも当然に影響がでてくることになる。
具体的には、国外関連者(外国子会社等)に外国税務当局が移転価格税制を適用し、課税が行われた場合、国外関連者が外国税務当局に、我が国の法人が国税庁にそれぞれ相互協議の申立てを行い、この申立てに基づき外国税務当局と国税庁との間で相互協議を行う。
この相互協議において合意に達したときに、当該合意した独立企業間価格で所得の再計算を行い、我が国の法人の所得及び法人税額について減額更正を行い、還付が行われることとなる(対応的調整)。
なお、この更正については、当局間の合意が行われた日の翌日から起算して二月以内に当該法人が更正の請求を行い、この請求に基づいて国税当局は減額更正を行うこととなる。
地方税では、法人住民税においては法人税額を、法人事業税においては原則として法人税法の規定による法人の所得を課税標準としているため、我が国において移転価格税制による法人税の課税が行われた場合には、法人住民税及び法人事業税において追徴課税が行われ、また、対応的調整により法人税が減額更正された場合には、法人住民税及び法人事業税においても減額更正され還付が行われることとなる。
納めすぎた税を還付する場合、通常であれば即時還付を行うことになっており、還付金債務が発生した時期から速やかに還付を行い、還付が遅れた期間に応じて還付加算金を付すこととなっている(更正の請求があってから3ヶ月または更正があってから1月のいずれか早い時期を起算点として還付金を付すこととなっている(地方税法第17条の4第1項2号))。
移転価格税制の適用に伴う対応的調整が行われた場合、過去何年にもわたり遡って多額の減額更正を余儀なくされる場合もあり、国と異なり地方団体は財政規模が小さいため、財政運営に大きな支障を生じるケースがあり得ることとなる。
また、地方団体では、還付のための国税収納整理資金のような制度がないため、年度途中において還付のため補正予算を編成しなければならないことなどが問題点として指摘されていた。
これに対しては、交付税の年度間精算の仕組みや減収補てん債等の財政上の措置が講じられていたところであるが、突発的な還付についての影響を緩和するための税制上の措置が必要とされていた。
ウ 平成6年度改正
そこで平成6年度の税制改正において、移転価格税制の適用に伴い対応的調整が行われた場合、法人住民税、法人事業税の減額更正による還付すべき額については

 

 

 

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